不動産売却の流れ②

価格査定
〜いくらくらいで売れそうかを知る〜

 

まずは「いくらくらいで家が売れそうか?」の成約価格予想を不動産会社に依頼します。

 

不動産の価格査定は、車や引越しの見積もりと同じだと勘違いしている人も多いのですが、勘違いしたまま売却を進めると落とし穴に落ちますので、しっかりと理解することが肝心です。

 

 

不動産の「査定」の意味をしっかりと理解する

 

4つの会社に価格査定を依頼して、各社から以下の査定が出てきたら、どう思いますか?

 

A社:4,200万円
B社:5,000万円
C社:4,300万円
D社:4,200万円

 

車の買取と同じであれば、5,000万円の査定を出してきたB社に買取をお願いするべきでしょう。

しかし、不動産の場合はB社に対して「高額査定で客を引っ掛ける悪い業者もしくは何かミスをしているダメな会社なのでは…?」と疑いの目を向けるべきです。

 

仲介取引における中古不動産の成約価格は、最終的に売主様と買主様の交渉の末に結ばれる売買契約で決まります。



不動産会社が買い取るわけではないので、不動産会社の価格査定とはあくまで「成約の予想価格」です。

「このくらいの金額で売れるのでは?」という予想価格を出しているだけです。

 

つまり、
査定が高い=【いい会社・誠意がある・自分の家の価値を分かってくれ、その会社が高く売ってくれる】とは限りません。

不動産会社には、過去の不動産成約事例を確認出来る共有システム【レインズ】があります。

 

もし、そこの金額を大幅に超える査定が出た場合には、何かしらの根拠に基づく必要があります。

 

勿論、棟内に成約事例がなく、ルーフバルコニー、類を見ない特殊な形状、最上階、角部屋、眺望が良いお部屋等は、相場よりも高く成約出来る可能性は上がります。

ただ、このような内容も根拠を示さずに、価格だけを高く提示する会社には注意が必要です。

 

例を挙げると、以下のような流れで売却が進むことはよくあります。

 

(1)5,000万円と高い査定を出してくれたB社に誠意を感じて売却をスタート

(2)数ヶ月後売れないので4,500万円まで価格を下げようと提案してきた

(3)提案通り、4,500万円まで価格を下げて販売を開始した

(4)価格を下げても中々売却が難しく、さらに数ヶ月後4,000万円で買ってくれる業者(買取り専門会社)がいると提案してきた

(5)すでに売却をはじめて1年近く…これ以上はローン支払的にも厳しいので4,000万円で契約を進めた


こういった流れの場合、不動産会社は買取り専門会社からも手数料を受領しており、一般のお客様に5,000万円で売却するより、手数料総額が多くなる事があります。

 

チェックポイント

査定価格とは、不動産会社が推測する物件の成約予想価格であり、査定価格での売却を保証するものではありません。

提示された査定価格を鵜呑みにしてしまうと、売却活動に悪影響を及ぼす可能性があります。

査定価格は、あくまで1つの見解として捉え、本当に査定価格で売却できるのか、妥当性はあるのかを判断する必要があります。

 

価格査定で一番大切なのことは「根拠がしっかりしていて妥当な価格を提示してもらえているかどうか?」です。

 


本当のところ、いくらくらいで売れそうかを知ってはじめて「時間に余裕があるので少し背伸びをして高めに売りはじめてみる」、「早く売りたいので査定額丁度で売りはじめて少しずつ価格を下げてみる」などといった売り方の工夫もできるのです。

 

また、査定価格には「仲介取引を前提とした査定価格」と「不動産会社による買取りを前提とした査定価格」があります。


同じ査定でも価格に大きな差額が生じますので、不動産会社から提示された査定価格は「仲介取引」「買取り取引」のどちらなのかを念のため確認しておきましょう。

 

成功のポイント

●不動産の価格査定はあくまで成約価格の予想であると理解する。
●査定価格が高い低いだけではなく、納得のいく根拠が示され、成約予想として正しいかどうかが重要(そうでないと、半年・1年後に計画が破綻する可能性大)。

 

 

根拠の乏しい高額査定は「営業行為」である

 

査定価格は単なる「成約の予想価格」であり、なんの責任もないという点はすでに解説しました。



それでもやはり高額査定を提示されると悪い気はせず、その不動産会社に売却を依頼したくなる人は多くいます。

また、その点を不動産会社はよく理解しています。

 

後ほど解説しますが、不動産会社の目的は「自社だけに独占的に売却依頼をしてもらう(専任媒介契約)=手数料獲得がほぼ約束された状態にする」ことです。

その為に高額査定をして、売主様からの売却依頼を獲得しようとします。

 

ここで一度考えてみてください。

「自分なら売却を依頼する不動産会社を、どういった判断基準で選びますか?」

 

不動産仲介のシステムを知らない場合には、財閥系大手不動産会社やデベロッパー会社(新築分譲会社)を選ぶ方が多いと思われます。

 

ただし、不動産仲介の場合には1棟新築分譲とは違い、現代は大手・中小が売主様側の仲介会社というだけでは決めてにはなりません。

 

実際、自身が不動産の購入を検討していると想定して、ネットで不動産の情報ではなく、販売してある不動産会社を気にする事はございますか?

勿論、あまりにも宅建業免許番号が浅く、聞いた事のないような横文字の会社は警戒するかと思いますが、そこを必須として選ぶ事はありません。

 

後述しますが、現代は店頭来店よりも、各種ポータルサイト(ネット)で物件を選定し、ネットからお問合せをするのが主流のためです。
また、不動産会社間には、不動産流通システム「REINS」があり、媒介契約を締結すれば、大手・中小関係なく、どの不動産会社からでもご紹介が出来ます。

 

そんな差別化ができない中、非常にわかりやすく他社と差別化できるもの。



それが「査定価格」なのです。

一括査定は特にそうであり、そもそも広告が「高額査定」を競い合うように見えるサービスです。

 

なので「B社は査定価格が高く、うちの価値を良くわかってくれている、誠意のある営業マンだ」と勘違いをする売主様が多いのが事実です。

 

その結果、半年~一年後に売れなかった場合「不動産屋に騙された」、「不動産業界は怖い」となってしまうのです。

これは一括査定運営元の広告方法に問題があるのですが、実際には、そこを見極めるのが一括査定ではない事を認識していいただきたく思います。

 

あくまでも「査定価格は成約予想価格」、「高額査定は営業行為(根拠に乏しいモノは)」ということを忘れないようにしてください。

 

成功のポイント

●査定価格は成約予想価格であることを忘れない
●高額査定は営業行為(他社より高い査定を出して差別化し、売却依頼を獲得しようとしている)ということを忘れない
 

 

結局のところ価格査定をする意味は?

 

価格査定は「いくらで売り出すか決めるため」にするものです。

 

高額査定に一喜一憂して踊らされることなく、色々な不動産会社から出された査定書をよく見て、実際に自分の家はいくらくらいで売れそうなのか?ということを知りましょう。


いくらくらいで売れそうかが分かった上で、スケジュールや経済状況を考えながらいくらで売り出すのかを判断するのです。

 

「4200万円で売れるのが妥当だろう」、「半年後以降に引き渡せれば問題ないので、まずは少し高めの4500万円で売り出して、売れなければ3ヶ月を目処に4200万円まで値下げしよう」
などといった販売計画をきちんと立てられるようにしましょう。

 

同じ4500万円で売り出すにしても【高額査定に翻弄されて4500万円でズルズルと販売が長期化】するのと、【高めに売り出していると理解した上で、数ヶ月程度で計画的に値下げして販売】するのでは、最終的には全く違う結果となるはずです。

 

成功のポイント

●価格査定はいくらで売り出すか決めるために行う
●売れそうな値段を認識した上でしっかり販売計画をイメージしましょう

 

 

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不動産売却の流れ①

①事前準備
〜知っておくべきこと、決めておくべきこと〜

 

まずは、売却活動に入る前に知っておくべきこと、決めておくべきことを紹介します。

 

売却をする理由をあらためて整理する

 

まず、ご自身が不動産を売却する理由は何でしょうか?

 

(1)「転勤が決まった」

(2)「2LDKから3LDKに引越したい」

(3)「隣の部屋が新築時より高い値段で売れたから興味がある」

(4)「急に現金が必要になった」

(5)「住宅ローンの支払いが厳しくて賃貸に住み替えたい」

(6)「相続したので売却したい」

など、ひとりひとり事情は異なると思います。
なかには他人に知られたくない事情があるかもしれません。

 

しかし、不動産売却を成功させる上で、売却理由を明確にすることは必須条件です。

中古不動産の購入者は売主様が思っている以上に、売却理由が気になっています。

 

中古不動産の取引で失敗したくないのは売主様も買主様も同じです。

 

逆の立場になると感じますが、売ろうとしている物件について「なにか気に入らない点や欠陥があるから売るのではないか?」、「住みにくい環境だから売るのではないか?」など、あれこれ考えてしまいます。

 

売却理由を聞かれて、曖昧に答たり、ちぐはぐな回答をしてしまうと、不動産会社も買主様も不審に思ってしまいます。

言うのに抵抗がある理由でも勇気を持って正直に伝えましょう。

 

また家族や親族など、ご自宅の売却に関係する人と事前にしっかりと話し合っておくことも大切です。


【奥様が近所づきあいや学区の問題で最後まで引っ越しをためらっており、売却が中止になる】、【買換え先で同居を予定であったり、資金を援助してもらうはずの親の反対にあって、売却が中止になる】といった話はよくあります。

 

売却の理由や住み替え先については、事前にしっかりと周囲の人と話し合い、同意を得るように心がけましょう。

成功のポイント

●隠し事は不要。
売却理由を明確にして、ありのままを不動産会社に伝える。
●ご自身の物件を購入する人は、ご自身が売却する理由を知りたがっている。
●家族や親族としっかりと話し合いをしておく。

 

 

相場価格を知っておく

 

ご自身のマンションや戸建に一体いくらぐらいの値段がつくのか。

売却を不動産会社へ依頼する前に漠然とでも、相場価格を頭の中に入れておくことが大切です。

 

売主様が相場価格を知っているのと知らないとでは、不動産会社の対応も違ってきます。

ご自宅の相場を把握していれば、売却する時の売出し価格が妥当かどうか判断できますし、不動産会社と対等な立場で意見交換ができます

実際、売却活動を不動産会社に丸投げしてしまうと、不動産会社の言われるままに進んでいってしまいます。

 

現代では、マンションや戸建の相場を知るために様々なやり方があります。

一昔前であれば、わざわざ不動産会社に出向いてアドバイスを受ける必要がありました。

しかし、今は誰でも簡単に自分の不動産の価格を調べることができます。


不動産ポータルサイトなどで、自宅マンションや近隣の戸建の売出しを見てみるだけでもかなり相場感が養われますし、一括査定サイトで価格査定をするサービスもあります。

成功のポイント

●事前に不動産の相場を把握することで売出し価格の妥当性を判断でき、値付けミスによる売却活動の失敗を防げる。
●今は便利・簡単・無料で不動産の相場を知ることができる。
便利なツールはどんどん利用して売主様自身も相場感を身につけることが大切。

 

 

売るのが先か?買うのが先か?

 

ご自宅を売却後は、「新居を購入する」または「賃貸に住み替える」のどちらかに当てはまる方が大半だと思います。

 

新居の購入を伴う売却活動の場合は、
(1)「今の家を先に売却する=売却先行」
(2)「新居を先に購入する=購入先行」かを考えなければなりません。


ローンを完済していれば別ですが多くの場合、住宅ローン事情との兼ね合いが大きく影響します。

 

それぞれのメリットデメリットを把握したうえで売却のタイミングを決めましょう。

 

売却先行のメリットとデメリット

 

メリット

 

①事前におおよその売却価格が把握でき、新居購入の予算が立てやすい

②家が売れると分かってから新居を買うので安心(ダブルローンを避けられる)

③ご自宅の売却で得た資金を新居の購入資金に充当できる。
売却で手元に残る金額が、購入物件価格より高ければ、新たに住宅ローンを組む必要が無い

 

デメリット

 

④ご自宅売却後から、新居へ引越すまでに一時的な仮住まいが必要(2~3ヶ月で新居を購入する場合や引渡し期間を長くとった場合は別)

 

 

購入先行のメリットとデメリット

 

メリット

 

①ご自宅の売却活動に左右されず、納得がいくまで新居探しができる

②仮住まいの必要が無い(売却先行の場合は仮住いが必要な場合がある)

③新居に引越後は自宅が空室になるため売却活動がスムーズ(いつでも内覧ができるなど)

 

デメリット

④ご自宅の売却資金を購入資金に充当できない。別途購入資金を用意する必要がある

⑤場合によってはダブルローンになる可能性もある

 

買い替え、賃貸へ住み替えを問わず、住み替えのスケジューリングは不動産会社の得意とするところです。

ローンの残債や返済額、ご自身の希望のスケジュールを伝えた上で、実現可能かどうか、信用出来る
不動産会社のアドバイスを参考に進めていきましょう。

 

成功のポイント

●優先すべきは自分の「経済状況」と「生活スタイル」。
売るのが先か、買うのが先か、それぞれのメリット、デメリットを把握して決断する。

 

 

引渡しの時期をいつ頃か考えておく

 

ご自宅の売却活動で最後にやってくるのが「引渡し」です。


引渡しとは、その名の通り、ご自宅を買主様に引き渡すことです。

具体的には、玄関の鍵を渡し、入居できるようにし、不動産の所有権を買主様の名義に変更します。

 

売却活動の後半でよく出てくる言葉に「決済」や「引渡し」がありますが、「決済」は買主様が不動産の残額を売主様に支払うことであり、「引渡し」は売主様が不動産を買主様に引き渡すことを意味します。

よく勘違いされやすいのですが、一般的な売買契約では、契約と引渡しを同日に行う事は多くありません。



理由としては、売買契約後に買主様の住宅ローン本審査手続き、もしくは売主様の住宅ローンの繰上一括返済手続きを行うことになるからです。

契約日から引渡し日までは、大体1ヶ月~3ヶ月の期間を要します(半年~1年の長期間も可能)。


ご自宅の引渡し時期は、売主様だけでなく、買主様にも大きな影響が出ますので、不動産会社に売却活動を依頼するまでには考えておく必要があります。

 

住み替えを伴う売却活動では、住み替え先への引越しのスケジュールに合わせて引渡し日を決める必要があります。



ただし、売主様にとって契約日から決済までの期間を意味なく長引かせるのは、危険負担条項の理由からも、あまりオススメはできません。



どのタイミングで、ご自宅を引き渡すべきか慎重に検討しましょう。

成功のポイント

●不動産売却の最後は「引渡し」にて完結する。
●売主様にとって、契約日から引渡し日まで期間を長引かせるのは要注意。
住み替えのタイミングと両睨みで、ベストな引渡しの時期を決めよう。

 

 

売却に必要な諸費用について知っておく

 

不動産売却では、売主様(ご自身)が負担しなければならない諸費用が発生します。

 

どのような費用が掛かるのか事前に把握しておきましょう。ここでは全体のイメージを掴んでください

 

(1)売却時に必要な諸費用


・仲介手数料(媒介契約を締結した不動産会社に支払います)


・印紙代(印紙税という税金で、売買契約書に貼付します)

 

(2)必要に応じて発生する費用


・登記費(ご自宅の住宅ローンが残っている時の抵当権抹消費用で、司法書士に支払います)


・譲渡税(売却によって利益が出た場合に支払う税金で、所得税と住民税があります)

 

仲介手数料や印紙代など、ほとんどの場合発生する費用の他に、不動産を売ることで利益=譲渡所得が出た場合は、その利益に税金=譲渡税がかかり、確定申告が必要となります。

 

ただし、条件を満たせば「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除」を使用でき、売却した利益に税金が発生しなくなります。

しかし、「3,000万円の特別控除」を使用し、すぐに住み替え先を購入する場合には、一定期間「住宅借入金等特別控除(住宅ローン控除)」が使用できなくなるので、注意が必要です。

 

譲渡税は不動産を高く売却して利益を出そうとしている方には気になるポイントだと思います。

譲渡税の計算方法はなかなか複雑です。

 

不動産を所有してた期間が5年以下であれば[短期譲渡所得]、5年超の場合は[長期譲渡所得]となって税率が異なる上に、特別控除や復興特別所得税も絡んで来ます。


譲渡所得の計算も一筋縄ではいきません。

建物の減価償却なども絡むので簡単に計算することは難しくなります。

 

通常、税務相談は税理士の独占業務となります。

ただし、仲介に必要な範囲では説明しても問題ないと判例が出ております。

 

確定金額は税務署や税理士にお聞きいただく形になりますが、仲介会社の担当によっては概算を算出できます。

 

成功のポイント

●不動産売却には仲介手数料や税金等の諸費用がかかる。
●条件を満たせば「3,000万円の特別控除」が使用でき、売却益に税金が発生しない。

 

 

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不動産売却の流れ

 

 

 

 

不動産の売却は、5つのステップに分けられます


これら5つ全てが重要であり、
どれか1つでも失敗してしまうと、売却活動全体に悪影響を及ぼしてしまいます。

売却活動の全体の流れを事前に把握しておくことで、自分が今どのステップにいるのかを理解することができ、不動産会社とのやりとりもスムーズに進めることができます。

 

以下の①~⑤は全体の概要になります。

 

事前準備 
事前に整理したり、把握しておくべきことがあります

 

価格査定
いくらくらいで売れそうかの成約想定価格を依頼します

 

媒介契約
売却活動を依頼する不動産会社と媒介契約を締結します

 

売却活動
広告を出したり、内覧対応をしたり売るための活動をします

 

売買契約・決済 
買主様と売買契約を結んで不動産を引き渡します

 

 

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