不動産売却の流れ⑤

⑤売買契約・決済
〜いよいよ契約・引き渡し〜

 

買主と条件の合意ができれば、次は売買契約を締結します。

ここでは、売買契約と重要事項説明の内容、売買契約で特に注意すべき条項である「売買契約の解除」と「契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)」などについても紹介していきます。

売却活動のゴールはもうすぐです。大切なポイントを把握した上で売買契約に臨みましょう。

 

売買契約を結ぶ

 

売買契約は、売買取引の当事者である売主様と買主様の間で締結します。

売買契約書は基本的に仲介する不動産会社が作成しますが、契約書に書かれている内容は全て売主様と買主様に帰結します。

特に個人間での売買取引では、自由に契約内容を決めることができるので、一方的に自分が不利な内容になっていないか自己責任で確認をする必要があります。

しかし、はじめて自宅を売る方が売買契約書の内容を全て理解するのは困難なので、最低限として「売買契約の解除条件」や「契約不適合責任」等の重要なポイントは押さえておきましょう。

 

また、売買契約とセットで行われるものに「重要事項説明」があります。

重要事項説明とは、不動産の概要や契約の内容などの取引の重要な事項について説明する事を言い、不動産会社の宅地建物取引士によって売買契約締結の前に行われます。

なお、重要事項説明は、宅地建物取引業法により仲介する不動産会社の必須義務と定められています。

 

ちなみに、売買契約当日に売主様が持参するものは以下になります。

契約当日になって必要書類がないなどと慌てないよう余裕を持って事前にしっかりと準備しておきましょう。

 

売買契約当日に売主が持参するもの

① 身分証明書
② 実印
③ 権利証(登記識別情報通知)
④ 収入印紙(契約書貼付用)
⑤ 仲介手数料の半金(通常は現金)

 

成功のポイント

●重要事項説明は、不動産会社の宅地建物取引士によって売買契約締結の前に行われる。
●重要事項説明書、売買契約書を全て理解するのは困難なので、最低限として「売買契約の解除条件」、「契約不適合責任」等の重要なポイントは把握しておこう。
●初めての自宅売却では、色々と分からないのは当然の事なので、疑問や不明な点があれば、気兼ねなく不動産会社に質問しましょう。

 

 

売買契約の解除について

 

売買契約を締結しても解除される可能性があるので、まだ完全に安心はできません。

売買契約の解除条件は重要な条項の1つですので、売主は解除条件の内容を理解しておく必要があります。

特別なケースを除き、主な解約条件には下記のようなものがあります。

 

主な売買契約の解除条件

 

 

① 手付解除

 

売買契約締結時に買主から売主に支払った手付金を利用して解除することです。

 

具体的には、買主から解除を申し入れた場合は手付金の放棄、売主から解除を申し入れた場合は受領している手付金の返金に加えて手付金の同額を買主にペナルティとして支払うことになります。

 

 

② 住宅ローン特約による解除

 

買主様に過失(落ち度)が無く住宅ローンの審査が通らなかった場合、救済措置として、ペナルティ無しで契約を白紙解除できるものです。


住宅ローン特約による解除を少しでも防ぐためには、契約前に買主の方で「住宅ローンの事前審査」を受けてもらいましょう。

住宅ローンの事前審査が通れば、余程の事が無い限り本審査も通ります(フラット35・ネット銀行を除く)。

買主様の事前審査が通過したことを確認した上で売買契約に臨みましょう。

 

 

③ 危険負担による解除

 

自然災害等の不可抗力によりマンションが倒壊するなどして、売主様から買主様へ引き渡しが不可能な場合に無条件で白紙解除できるものです。

 

成功のポイント

●売買契約の解除条件はどのようものがあるか内容を理解しておく。
●「住宅ローン特約」による解除のリスクは事前に回避できるので、「購入希望者の住宅ローンの事前審査が通過したか」を確認した上で売買契約を締結する。

 

 

契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任)について

 

不動産の売買取引においての「契約不適合」とは、引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない事を意味します。

従前の「瑕疵担保責任」と異なり、改正民法における契約不適合責任では、客観的に瑕疵といえるか否か、それが隠れたものであるか否かを問題とするのではなく、引き渡された目的物がその種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しているか否かが問題になります。

 

自宅を買主様へ引き渡しした後、契約の内容に適合していない項目が見つかった場合に売主様が責任を負うことが契約不適合責任です。

契約不適合責任の内容として、①履行の追完請求権、②代金減額請求権、③債務不履行の規定による損害賠償、④債務不履行の規定による契約解除が定められています。


契約不適合責任の内容を定めた条項は売買契約書に必ず出てきます。

売主様には売買契約日に「付帯設備表」と「告知書」へ物件に関する内容をご記入いただきます。

 

そこで設備の有無や故障、過去の修繕履歴等をご記入いただき、買主様に確認・署名捺印していただきます。

書類に記載した内容と引渡した物件に相違がなければ契約不適合責任を負う可能性は少なくなります。

 

なぜならば、中古不動産は現状渡しが原則だからです。

いくら設備に故障箇所があったり、劣化をしていても、それを修理して渡す必要はありません(専有部分の配管等を除く)。

ただし、民法572条により、売主様が契約不適合を知っていながらこれを告げずに売買契約を締結した場合のように、それが信義に反する場合には契約が無効となります。

 

なので、売買契約前には不具合部分を再度確認し、「付帯設備表」と「告知書」に漏れなく記載する事が重要です。

ちなみに売主様が契約不適合責任を負わなければならない期間は、引渡し後3ヶ月が一般的です。

 

成功のポイント

●契約不適合責任とは、売却した自宅に種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しない項目が見つかった場合、売主様が負担を負うこと。
●契約不適合責任の対象は、従前の「隠れた瑕疵」でなく売買契約に記載した内容に適合しない箇所になる。後々のトラブルを防ぐ為にも、物件の欠陥事項は隠さず買主様へ告知することが大事。

 

引き渡し(決済)

 

自宅の売却で最後に行うのが「決済」と「引き渡し」です。



「決済」は買主様が不動産の残額を売主様に支払うことであり、「引渡し」は売主様が自宅を買主様に引き渡すことです。

 

引渡し当日の持参物や具体的な流れは以下になります。

※お客様によって内容は異なります。

 

決済・引き渡し当日の持参物


① 実印
② 権利証(登記識別情報通知)
③ 物件の鍵(宅配ボックスカード含む)
④ 印鑑証明書(実印と同一印影)
⑤ 身分証明書
⑥ 預金通帳等(着金確認のため)

 

決済・引き渡し当日の流れ


① 決済会場に集合(多くは買主様が住宅ローンを組んだ銀行)

② 司法書士が決済に必要な書類が揃っているかを確認


③ 住宅ローンの実行(銀行から買主様の口座に融資額が一括で振り込まれます)


④ 買主様から売主様へ不動産の残代金を支払う(まとめて固定資産税や管理費等の清算も行います)


⑤ 着金確認後、売主様から買主様へご自宅の鍵を引き渡し


⑥ 不動産会社・司法書士に報酬を支払う


⑦ これで一連の売却活動は完了です◇

 

成功のポイント

●決済・引き渡し当日の流れや持参するものは事前に把握しておく。
●決済・引き渡しは自宅売却の最後の総仕上げなので、最後まで問題なく引き渡せるように何度も確認する。

 

 

 

まとめ

 

今回、不動産売却の流れをゼロの状態から少しでも把握出来るように包み隠さず記載してきました。

不動産業界はグレーな印象の業界かと思いますが、実際にクロに近い事をやっている会社は多くあり、誰もが知っているような大手ですらグレーな行動をとっているのが現状です。

 

最近は誰でもネットを使用出来る環境が整っており、不動産会社の思惑通りには進まない事も多くなってきました。

ただ、全てを不動産会社に委ねてしまうと搾取されます。

あまりに介入すると逆効果ですが、売主様の適度な介入は不動産会社に緊張感を与えて結果的に良い方向に進んでいくはずです。

 

そして、最終的には信用出来る仲介会社と担当を見つける事が重要になります。

 

 

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